2004年 08月 13日
退職金はなくなる! |
(いささかセンセーショナルなタイトルをつけてしまったが、内容は・・・やっぱりショックかもしれない。あしからず)
政府税制調査会が退職金への課税強化を進めようとしている。
これは一見すると「増税」策であるかのように見えるし、現にそう解釈して非難する声もあるが、だがちょっと待って欲しい。これを単に「増税」と考えてはいけない。
「増税」でなければなんなのか? 説明しよう。
簡単に言うとこういうことだ。
(図1)
退職金制度が発達したのは高度成長期。
その高度成長期のマクロ経済環境はずっとずっとインフレが前提だった。
当時いくつかの理由で日本は間接金融を推進する政策を取っていた。
そして企業側は長期勤続を歓迎していた。
以上3つの事情が複合した結果が「退職金・退職年金制度の発達・高額化」だったということがまず重要だ。詳しい説明は略す(知りたい方はコメントで聞いてくれ)。
つまり、退職金という制度は決して「労働者のための」制度ではなく、日本国と経営者側の都合によって作られた制度だったのだ。
現在、退職金は税制上優遇されている。要は同じ給料をもらうのにでも、毎月全額もらうよりも、一部を積み立てておいて退職金としてもらったほうが税金が安くなる。この退職金優遇税制はサラリーマンの当然の権利などではなく、高度成長期の3つの事情のもとでのみ成立した国策だったということを忘れてはならない。
しかし、高度成長期の3つの前提はすでに崩れた。デフレ基調が完全に定着し、国策は直接金融推進に大きく切り替わり、企業はもはや雇用保障をしたくない。
そうすると何が起きるか? 現在、多くの企業で「退職給付債務の圧縮」が急務となっている。「確定拠出型年金制度」という名前を聞いたことのある方も多いだろう。あれはこの「退職給付債務の圧縮」策のひとつである。
その行き着く先は何かというと、要するに退職金制度そのものの撤廃なのだ。増税とは次元が違う。「退職金課税強化」と聞くと増税策に見えるだろうが実際の狙いはそこにはない。
もちろん、結果として増税にはなる。だがそれは問題の本質ではない。
本質は、「退職金制度自体を廃止する! その分毎月の賃金を上乗せして払うから、老後の資金は自分で作れ!」ということなのだ。
それを見誤って単に「増税」にだけ反応して批判してはいけないだろう。
by ideacraft
| 2004-08-13 23:31
| 歴史・政治・安全保障