2004年 08月 12日
BSEの全頭検査は無意味! |
(この文書は2004.7.23に書いたものです)
月刊誌「Voice」の8月号を読んでいて、「全頭検査でBSEは防げない」という記事を読みました。著者の唐木英明氏は獣医学の専門家です。
この著者の論旨の中から要点を説明します。
まず、日本ではBSEの感染メカニズムについてまともに報道されていないため、このような誤ったイメージがはびこっているのではないか? という指摘。
(図1)
実際には以下のように、「検査」は完璧ではなく、必ず見逃すものがあるため、安全対策のためには「危険部位の除去」を行わなければならない。逆に危険部位の除去を確実に行っておけば、安全対策としては万全である。(そしてこれは世界的に実行されている)
(図2)
したがって、日本で行われている「全頭検査」には意味はない。全頭検査にかかるコストをそれ以外の対策に投じたほうがよほど実質的な安全性を向上させられるだろう。
・・・というものです。
では本来何のために「検査」があるのかを考えるには次のようなチャートが手頃かと。
(図3)
(↑ちなみにここでは「サーキット(Circuit)型チャート」の手法を使用)
まず、BSEに関して「安全な肉」を実現するためには2つのプロセスがある。
ひとつは、(A)BSEの感染自体を減らすことであり、
もうひとつは、(B)感染した牛の危険部位を除去すること。
このうち(B)は肉用牛として出荷する全頭に対して必須である。最終的にはこれが「安全性」の決め手である。
(A)を実現するためには、感染リスクを減らさなければならない。これは実際には肉骨粉の禁止措置である。
そして、(C)検査 は、感染リスクがどの程度あるかを把握して、リスク低減措置をコントロールすることに意味があるものであり、その観点では「全頭検査」をする意味はない。
それよりは、全頭検査をするマンパワー(=費用)を、
リスク低減措置の適正な実施
危険部位の除去の適正な実施
のために投じるほうが実質的な安全性を確保できるであろう、ということです。
この話、おそらく製造プロセスの品質管理なんかをやっている方はすぐわかるんじゃないかな?
一般の人でもきちんと説明すればそんな難しい話ではないと思うのですが。こういう報道は見た記憶がありません。
by ideacraft
| 2004-08-12 08:41
| 歴史・政治・安全保障